大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)241号 判決

記録によれば、(一)被告人は昭和二十九年六月十五日富山地方裁判所礪波支部に於て、恐喝未遂の罪に因り、懲役十月、三年間執行猶予の裁判の言渡しを受け、右裁判は同月三十日確定するに至つたものであること(二)原判決は、挙示の証拠に基いて判示の事実を認定し、刑法第二百五十二条第一項、第二百四十六条第一項、第四十五条、第四十七条、第二十五条第一項等を適用した上、被告人を懲役六月に処した上、なお、裁判確定の日より三年間、右刑の執行を猶予する旨言渡し、刑執行猶予中の者に対し、再度に亘る執行猶予の裁判をしたものであり、しかも、昭和二十八年法律第百九十五号に依る改正後の刑法第二十五条第二項、第二十五条の二第一項に従い、被告人を保護観察に付する旨の言渡しを為さなかつたものであることをそれぞれ認め得る。思うに、原審は、記録によつて明かな如く、被告人の判示所為が、いずれも昭和二十九年四月中又は五月中の所犯に係ることより、これを目するに、さきに言渡された恐喝未遂の罪の余罪なりとし、本件について刑法第二十五条第二項、第二十五条の二第一項(昭和二十九年法律第五十七号による改正前のもの)を適用せず、従つて、被告人を保護観察に付する旨宜告することもなく、昭和二十八年六月十日言渡された最高裁判所判決の趣旨に則つて、再度に亘る執行猶予の裁判をしたものであろうことを看取するに足り、現行法上、斯る解釈の成立する余地も、決して、ない訳ではないと考えられるけれども、しかしながら、いやしくも改正法(昭和二十八年法律第百九十五号)施行後に於て、再度、刑の執行猶予の言渡しを為す場合には、その余罪であると否とを区別することなく、すべて刑法第二十五条第二項(本件にあつては、昭和二十九年法律第五十七号による改正前のもの)によるべきであると解釈するのが相当であつて、これと異る見解より、改正法施行後、再度に亘る執行猶予の言渡しを為すに当り、刑法第二十五条第二項、第二十五条第一項の適用をしなかつた原判決は、畢竟、法令の適用を誤つたものと言わざを得ず、その誤りは判決に影響するから、論旨は理由があり原判決はこれを破棄しなければならぬ。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿郞 判事 沢田哲夫)

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